2015/08/19

ファーストアルバム本日発売です

P-VINEよりファーストアルバム「井手健介と母船」、いよいよ本日発売となります。
いただいた推薦文をご紹介します。



驚くべき極上の音響の中で
井手健介のボーカルが震えている。
それは閉ざされた居心地いい空間に出来た
小さなひび割れなのか。
その向こうの野性がそこから顔を出す。
そんな通路のようなボーカルに、いつしか身体ごと吸い込まれてしまう。
樋口泰人 (映画評論家/boid主宰)



よく設えられた箱庭を覗くと地平線まで草原が広がっていた。そよそよと緑色のグラデーションを風が撫でていく。水分をたっぷり吸って少し滲んで見える遠景。きっと同じ湿度を保つような仕掛けが施されてあるのだろう。草むらに分け入ると、あなたはガラスの破片を踏む。ファルセットの歌声とそこに巻きつくフルート、「ああ」と「目がさめて」の間の「もう」や、目を閉じて独り占めしたいようなブレイクとサイケデリック・ジャム。本作の随所でそれらの破片は雷管となる。「ああ」とひと息ついて言葉を漏らす癖。その「ああ」はため息だったり、いらだちだったり、口ごもり、空元気とさまざまだが、井手健介のそれは、ああ、とてもみずみずしい。
福田教雄(Sweet Dreams Press



井手健介を井手健介として知る前に、ぼくはどこかで絶対に会ったことがある。それを思い出そうとして、さっきから彼の歌を聴いている。記憶のどこかにある映像に井手健介を置いてみる。しばらく考えるうちに頭のなかで井手健介は、まじめな顔をしたままゆっくりと手足を動かし、どんどん奇妙に揺れ始める。そのダンスのようなゆらゆらが、そのフォークのような妄想が、ぼくの記憶にやわらかく触れるとき、思考はあられもなく乱される。
ああ、井手健介よ、なんできみはそんなに心の痴漢がうまいの?
松永良平(リズム&ペンシル)



洗濯物を干している音楽。凪ぐ寸前の風を求めている歌。窓からいつも外を見つめている室内楽。不安や嫉みで他人を追いつめない。慎ましく柔らかいが、骨を鍛えようとしているのだと思う。井手船は愉しい。
湯浅学(音楽評論家/湯浅湾)